简介
第二の故郷『ウェルムンガルド王国』で冒険者活動をしていたあなたは、類まれなる才能を発揮し冒険者の最高位『S級冒険者』となり、多くの魔物を打ち滅ぼす英雄として民からも慕われていた。
その噂を聞きつけて王国へやってきた勇者は、魔王討伐という大義名分の元、あなたを半強○的に勇者パーティへ勧誘し冒険者稼業を引退させた。王国の民たちから惜しまれつつも、あなたはS級冒険者という肩書きを捨て、世界平和のためにその身を捧げる覚悟で勇者と共に魔王討伐の旅に出た……はずだった。
勇者のことを一文字で表すならば、まさに『悪』。彼は勇者という肩書きを使い、あらゆる悪事を行っていた。その目に余る言動に異を唱えたあなただったが、勇者が心を入れ替えることはなかった。
そしてある日、勇者パーティが全滅の危機に襲われるという最悪な出来事が訪れる――。
勇者パーティは戦力増強のために『聖女』と呼ばれる女性を探していた。その女性が魔物の浄化のためにとある洞窟へ潜っていることを知り、彼らは後を追う形で同じく洞窟へと足を運んだ。そこで無事に聖女と合流することはできたが、同時に最悪な事態を迎えることとなる。
勇者たちにアンデットの群れが襲いかかった。数が多く、不意も突かれたため対処に遅れてしまう。しかしそれでも本来であれば勝てる戦闘だった。”勇者の裏切り”さえなければ――。
あなたのことを常に疎ましく思っていた勇者は、聖女を仲間に引き入れる代わりにあなたをパーティから外すことを考えていた。そのため今回の襲撃は計画を実行に移す絶好のタイミングだった。
「ここでさよならだ、元S級冒険者さん」
誰にも聞こえないほどに小さく呟かれた勇者の声。それと同時にあなたの足元へ放たれる悪意ある攻撃魔法。衝撃により地盤が崩れ、あなたはアンデットの群れと共に洞窟の底へ落とされる。
幸運にも生き延びたあなただったが、アンデットに呪いをかけられてしまいバッドステータス『不眠』を付与されてしまう。一切の睡眠を取ることができず、体は衰弱していき心も不安定な状態になっていく呪い。あなたは『不眠』に悩まされつつも、何とか洞窟の底から這い上がり3日後には近くの村まで逃げ延びることができた。しかしそこで目にしたのは、酒を浴びるように飲みながら醜悪な笑みで”洞窟での出来事”を語る勇者の姿。同席していた村人たちは顔を引きつらせながら彼の話を聞いている。その話にはあなたの知らない情報も含まれていた。
“聖女が元S級冒険者のことを心配して、パーティ全員で洞窟の最深部へ向かうべきだと提言した”こと。そしてその言葉に苛立った勇者は”聖女一人を洞窟に置き去りにして村に帰還した”こと。
それを聞いたあなたは怒りに身を任せて勇者に向かって飛び掛かろうとするが、『不眠』によって衰弱した体では思うように力が出せず、すぐに気付かれ攻撃を防がれてしまう。それどころかバッドステータス『不眠』のことを見抜かれ、勇者による反撃を喰らってしまう。
「バッドステータス『不眠』か……。泥酔した俺にすら勝てないお前に、戦力しての価値はもうない。用済みだよ、あんた」
そして正式に勇者パーティ―から追放されたあなたは、”勇者パーティの一員”という肩書きさえも奪われ、旅の途中で手に入れたアイテム類も没収された。
すべてを失った元S級冒険者。体も衰弱し、今にも力尽きそうな状態。それでもあなたは必至に体を動かし村を出た。自分のために洞窟の最深部へ向かった聖女の元へ――。
……ふらふらとした足取りで洞窟内を彷徨う。バッドステータス『不眠』のせいで眠ることもできず、完全に意識を失うこともできない。心と体はすでに限界を迎えており、自分が今何をしているのかさえはっきりと理解ができない状態になっていた。
そして気が付くと……あなたは洞窟の中で横たわっていた。しかしなぜか後頭部に地面の冷たさはなく、人肌のような暖かさが感じられた。それどころか体全体が淡く光り、ほどよい温かさに包まれているような感覚だった。
「ご安心ください。もう大丈夫ですよ」
視界に現れたのは天使のように微笑む女性の姿。まるで天国に来たのかと錯覚してしまいそうになるあなただったが、その女性の顔に見覚えがあったため、震える唇を無理やり動かし声にならないほどのか細い声で感謝の言葉を口にした。
“……聖女さ…ま、ありが……とう……”
そしてあなたは力尽きてしまい瞼を閉じてしまう。視界が闇に閉ざされたまま、かろうじて意識だけが残り続け、再び生と死の狭間へ落ちていく。
「必ずあなたを救ってみせます、――大治癒《ヒール》」
彼女の声に呼応するようにして、あなたの体を包む光はより輝きを増していく。一つ、また一つと傷が癒えていった。
生死を彷徨う者すらも救える力。その人智を超えた力を扱える世界最高位の治癒師『聖女”ユオン”』。そんな彼女との出会いは、世界最強クラスの元S級冒険者の人生を大きく変えるキッカケとなる――。


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